横浜女が滋賀で主婦する

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「この世界の片隅に」感想 わたしは煮込みハンバーグを作る

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公開日的には今さらですが。

まだまだロングラン上映中だそうです。

konosekai.jp

 

さていつも通り、ネタバレありで、思ったことをつらつらと。

あらすじなどは割愛するので、未視聴の方には不親切な部分が多いかもしれません。

気になる方は公式サイト等をご覧ください、というか、ぜひご自身で観てから戻ってきてくれたらうれしいな。

 

「映画評論」は他の方にお任せするとして。

おしゃべり聞いてるつもりで見てね。

 

  

わたしの視聴環境

 

今年6月下旬、シンガポール旅行時の機内で初鑑賞。

 

昨年は「君の名は。」やら「シン・ゴジラ」やら話題作が多かった中、もちろん本作の評判も知ってはいました。

「君の」や「シンゴジ」が大ヒットの一方「大衆受けエンタメ作品」という目で見られる中、「片隅」は通(ぶった人)からの評価が高い、というイメージ。

 

(おおたは「君の名は。」も好きですよ) 

 

でもどうしても「戦争映画?悲しいんでしょ、死ぬんでしょ。」と思って避けていた。

 

今回は6時間座ってじっとしなければいけないというヒマがありあまる状態で、

かつ無料で見れるというのがデカかった。

利用したのはシンガポール航空だったんだけど、日本映画もいくつかあって。

一覧を見て

「In This Coner of the World」

インディスコーナー…?ん、「この世界の片隅に」か!!!

とつながったときのアハ体験は忘れません。

迷ったんだけど、ここで見なければもう一生見ないかも、と思ったので視聴決定。

 

お察しの通り、まぁ環境としてはあまり良くないですね。

画面が小さくて情報を拾えなかったところがあるかもしれないし、

通常時ならアホかと思うほどの爆音でイヤホンつけてるんでしょうが、それでもやはり聞き取りにくいところがありましたし。

日本語字幕があればよかったのですが、残念ながらデフォで英語字幕つき。

(特に戦時下の固有名詞がいまいち聞き取れず。英語字幕読んでも分からんし。

旦那さんやお義父さんがなんの仕事をしてるのかとか、細かいところはよく分かってないまま見てましたごめん。)

 

太平洋上空を飛びながら、英語字幕で「この世界の片隅に」を見るききすぎたアイロニー。

 

空襲のシーンでちょうど機体が不安定になると緊張度まっくすでした。

この一点だけは、そのへんの4Dだかなんだかよりすごかったと言える。

(飛行機怖いです。でも船も怖い。陸地に居たい。)

 

原作は未読

 

原作もたいへん評価が高いようですが、おおたは読んでおりません。

より人物描写や人間関係が深かったり、映画には使われなかった戦争についての台詞があったり、という情報は拝見しましたが。

何気なく登場したのに印象深いあの紅も、割愛された原作のエピソードに関わると知って、だからやたらと気になるのか~と。

 

(感想は、鑑賞時の何も知らぬ状態前提、映画単体をもとに語っています。)

 

でもこの絵、見覚え有るんです。

「こうの史代」さんの漫画、絶対読んだことあるはずなんだよなーと。

たぶん小学生くらいのときに。

おじいちゃんのお友達が、お孫さんのいない本好きの方で、よく本を置いて行ってくれました。

でも詩集とか正直よく分からんくて。

これは珍しく漫画だったから、喜んで読んだら打ちのめされた…という思い出。

いまはその方も、祖父も、もういません。

 

絵だけじゃなくて、「ヒロシマもの」というのも、記憶の漫画との共通点。

たしか広島に住む姉妹のお話で、

「ヒロシマの女とは結婚させられない」という理由で反対されて恋人と一緒になれず、やがて原爆症が発症し弱っていく…みたいなストーリーではなかったか。

結末が思い出せないのは、とても悲しかったから、だと思う。

「片隅」でもすこーしだけ、妹さんの描写に似通うものがあったけど、違うと思うんだよなあ…。

調べた感じ「夕凪の街 桜の国」という作品が記憶に近そう。

確かめたいけど読んではない。これも映像化されているそうです。

 

そう。そうなんだよね。

戦争ものというジャンルはもちろんのこと、

直接ではないにしろ「この絵の女性」に悲しい記憶があったから、だからどんなに評判になっても観に行けなかった。

 

だらだらと本編の感想

 

やっぱりなんていうかそりゃ、視聴後「ずん…」ときましたよ。

 

わたしがあまりにも機内で「ずん…」としてるから、

隣にいた友達に「なんかアニメ見てたでしょ。何見てたの?え、片隅?それ絶対チョイス間違ってるよw」と言われたほど。

楽しい旅行のシメにはまぁ、ふさわしくなかったかもしれないですね…。(復路だった)

 

でも、思ったほど後味が悪くないという驚きも。

なんだろう、お涙頂戴演出に頼らない、いい戦争映画だと。

間違いなく戦争モノというくくりではあるけれど、想像してたのとちょっと違う…かな。

(まぁそういうの避け続けてて、「火垂るの墓」さえ見たことない人間が言うのもあれですが。ジブリ好きとか言ってるくせにね。)

 

プロットとしては、戦争で家族を亡くすし、自分の右腕も失くす。

食べものに困る描写も、日常的な空襲シーンももちろんある。

でもなんか、こう、「戦争映画」にくくりたくないなぁという感じ。

重要な背景であり舞台であり、せまる日付のドラマチックさは物語のキーだけど、

それよりなにより「すずさん」が中心。

主人公なんだからそりゃそうだけど。

ヒロシマを描くという都合のための主人公、ではなくて、

すずさんが生きたのがたまたまその時代その場所だった、という具合で消化してゆける映画です。

 

さっきから『広島』と言ってるけれど、お嫁に行ってからの生活の舞台は呉。

直接的にグロテスクなシーンはあまりない。

 

だからこそ、原爆孤児の女の子のお母さんのシーンが印象に残ります。

思い返せば「そういう直接描写」はこれだけじゃないかな?

紙芝居みたいな簡素で短いシーンなんだけれど、なんていうかとてもつらい。

座ったまま動かず、これは明らかに…という状態のお母さんの左腕にもたれてにこにこしている女の子の様子が、見ていてとてもつらい。

(何日経てばそうなるのか)蝿と蛆がひどくなって、ついに本当にお母さんを失くしてしまった女の子が、すずさんに拾ってもらえてよかった。

 

この女の子を拾うところが、お話の最後。

引き取るっていうより、ほんと、拾う感じ。

たまたま町で会って、汚いしお腹を空かせているし孤児であることは明らかで、一緒にうちに帰ろっか~って。

 

でもそれが、お母さんをなくした女の子のためだけじゃなくて、

子どものできなかったすずさん夫婦と、

子どもをなくした出戻りの義姉と、みんなをつなぐピースになるようで。

その子のお母さんもさいごに右腕を失くしていたから、すずさんに面影を求めて近づいてくるところが巡り合わせ。

物理的な喪失も、心の穴も、みんなの欠けた部分が埋め合あわされるようにぴったりおさまっていく。

「去年のはるみの服じゃ、こまいかねぇ?」と引き出しを開けるお姉さん。

(はるみちゃんの服、売ることも捨てることも、できなかったんだなあ…)

お姉さんには余生を可能な限り幸せに過ごしてほしいし、なによりいつでも機嫌よくいてほしいと思う。

(和解?の語りはもちろんぐっとくるけど、お姉さん、はるみちゃんのことがなくても小姑としての存在感すごかったぞ。)

 

ああー、みんなの居場所があって、よかったねえーって。

 

うまい具合におさまりやがって、という、甘いとも思われるラスト。

おおた、ハッピーエンド好きですから。

いやとてもハッピーとは言い切れないことだらけなんですが、それでも生きなきゃいけないし。

玉音放送の後、つぎつぎとご飯を炊く煙が出ている画の力強さと優しさよ。

 

「この世界の片隅に、わたしを見つけてくれてありがとう」って台詞もあったはず。

よかったねえ。

見つけあえて、よかったねえ。

世界の片隅に、居場所があること。当たり前のようだけど、それってとってもすばらしい。

 

そして「戦時下の日常もの」であり、本作には「恋愛映画っぽさ」もあります。

いきなりの縁談で(ほんとうは初対面じゃないけど)知らない男の人に嫁いだすずさんと、旦那さんの距離が縮まっていく感じもいいですよ。

街をデートをするほんわかシーンあり、そのへんのパンチラ巨乳アニメなんてめじゃないほどのエロチシズムあり、なのです。

初夜のシーン(もちろん直接描写は無いけど)とか。防空壕作ってるときの野外キスとか。

ねえ?

 

エロチシズムといえば、初恋(?)の男の子との再会ですが。

すずさんの肌が、やわくて、ぬくくて、あまい、というえろさ。

生きてるって、えろいんだ!と。

(素直にシてあげてもよかったのになぁと思うわたしの貞操観念はゆるかろうか。

だって彼は、海軍のひとですよね。次に船に乗ったら、もう死んじゃうかもしれないですよね。

おまけに憎からぬ初恋の相手。ここは旦那さんのご厚意とヤケに甘えてもええんじゃないかと思っちゃうんだけど、すずさんが貞淑な妻でなによりです。)

 

わたしちょっと、話の順番間違えてますね。

これが読書感想文ならば、「居場所」の話を最後にするのが正解です。

 

あ、あと、すずさんがドジしたときに(>∀<)っていう顔になるの可愛い。

 

右手。

 

コトリンゴさんの「悲しくてやりきれない」もよかったです。

この映画のためだけの曲ではないけれど、とてもよかった。

しょっぱなにこの歌が流れ始めたときは「序盤の序盤から悲しくてやりきれない、とは…やはりわたしに戦争映画は向いてないかもしれない…」と脱落しかけましたが、ちゃんと最後まで見てよかった。

 

冬のシーンもあるのですがやはり、はるみちゃんとのシーン、原爆、玉音放送と夏場の方が印象的で

日差しのなかご近所の田舎道を歩いていると、この歌がぼんやり浮かぶようになってしまいました。

「悲しくてやりきれない」なんて、うまい歌詞をもってきたもんですね。

ほんと、戦争なんて大きすぎる問題の中で、どこにもぶつけようがなくて、やりきれない話です。

この歌って最後まで聞いても、ほんと救われないんですよ。

「このもえたぎる苦しさは 明日も続くのか」で終わるの。

歌詞を調べて「ずん…」となった。

それでも汗かきながら、生きるんだけど。

 

救いがないながらもどこかやさしい感じがするのは、コトリンゴさんの声の力ですかね。

うしろの音もぜんぶ、子守歌みたいな仕上がりではなかろうか?

 

やさしいのは音楽だけじゃなくて、画の感じも。

あわくて、線がやさしくて。

爆撃のシーンを絵具であらわしていたのは、とてもきれいでした。

もしかしたら本当に、芸術家肌の人のあたまのなかでは、世界があんなふうに記憶されていくのかもしれない。

波うさぎのシーンもそう。きれいな映画。きれいなアニメーション。

 

そういえば少しだけ、ファンタジーも入ってましたよね?

人さらいのシーンとか。あれは結局なんだったんだろう…。

あれ人間には見えなかったけど、人間だった?

旦那さんとの出会いだから、現実と地続きのはずだけど。

 

で、そんなこんな、くすりとしてしまう日常の一コマ、どきっとする抑え込んだえろす、

色彩ゆたかな絵、あいまいな現実と空想、家族のほのぼの…などありつつ。

やはりどこか「ずん…」とくる。

 

わたしが鑑賞後一番に思ったことは

「帰ったら旦那くんに、煮込みハンバーグを作ってあげよう。」です。

 

(すずさんをお嫁にもらった周作さんの、口数は少ないけどやさしいところ、旦那くんと重なって愛しい。)

 

戦争はおそろしい~

核兵器反対~

むかしは食べ物にも困って~

平和な時代に生まれてよかった~

日本人の被害者意識~外交問題~

とか。

そんな戦争映画を観た後のテンプレみたいなことよりも。

 

あー旦那くんに、なんか美味しいもの作ってあげようって。

旅行終わりで疲れちゃうだろうけど、帰ったら荷物を置いて、買い物に行って、そうだ煮込みハンバーグがいいかなぁなんて。

 

落としどころそこなの?って思われるかもしれないけど

わたしのこの感想、自分で言うのもあれですが、「ものすごく素直」だと思うんだよなあ。

むしろ作り手さんが「うんうん、そんな気持ちになるでしょう?」と頷くんではなかろうか。

 

今日もだいじな人と美味しいごはんを食べて、

いい夢の中に暮らしていたい。

 

 

 

ではね |ω°)ノ

 

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