横浜女が滋賀で主婦する

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「奔馬 豊饒の海(二)/三島由紀夫」感想 女に愛されるって大変

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また「図書館で今さら日本文学を読んだシリーズ」のお話です。

 

(前回は、一巻目の「春の雪」を読んだ)

 

今回はそれの続き。

核心にはふれないつもりですが、最新作でもないので、

ネタバレとか気にせず書いてます。

 

そもそもなんで今こんなの読んでるか考えてみたのですが、

たぶん「前前前世」なんて曲が流行ってるから影響されたのかな、なんて。

そう、この本、転生のお話なんです。

しかも全四巻のはずだから、毎回生まれ変わっているとしたら

四巻目から見た一巻目の人生が、前前前世になるというわけだ…!

 

一巻目「春の雪」まではなんとなーくの前知識があったのですが

この二巻目「奔馬」からはノー知識で挑んでおります。

 

  

生まれ変わったけど、イメージと違った

 

前作の主人公は、わがままイケメン野郎の享年20歳、清顕(きよあき)ですが。

物語はその友人・本多が38歳になっている…というところから始まります。

 

本多!立派になって!!(好き)

 

そしてその本多が、なんやかんやあって18歳の青年と出会います。

それが清顕の生まれ変わり。

 

案外、生まれ変わるの早いね!

死んでから速攻生まれ変わっている計算!

 

しかもその出会いの場所が、滝の下なんですけど。

うん。さすがに覚えていたよ、前作で死にそうな清顕が本多に

 

「今、夢を見ていた。又、会うぜ。きっと会う。滝の下で」って言ったこと。

 

これ、聡子さんとの伏線じゃなかったの!!?

(聡子さん:前作のヒロイン)

 

たしかにね、本多に向かって言ったんだから、おかしくはないよね。

でもさ、聡子さんに会いたくて、死にそうになりながら奈良まで旅に出た帰りの台詞だよ?

聡子さんとの来世こそラブラブ宣言だと思うじゃん…。

 

しかも今作では、聡子さんは一切出てきません。

本多が「聡子さんに、清顕が生まれ変わったことを知らせたほうがいいのでは…いや、余計なお世話かあ」と考える一節があるので、お元気かとは思うけれども。

なぁんだ、イメージと違ったわ。

 

ちなみに、生まれ変わりについて本人は自覚なし。

年齢、滝の下で出会ったこと、身体的特徴(三つ並んだほくろ)、

ほかにも過去清顕が見た夢と現在が一致すること…などから、

本多だけが、誰にも打ち明けないながら、彼が生まれ変わったことを確信しています。 

 

恋愛ものじゃなかった 

 

「春の雪」は、まぁいろいろネチネチしてるけど簡単に言うことが許されるのであれば

「恋愛もの」だと思います。

でも今回は、途中長々と戦記もの的というか、男の戦いというか、

「とにかく腹切って死にてぇ!」という話です。

 

清顕の生まれ変わりの勲くんは、とにかく危険思想です。

もう死にたいの。天皇のために散りたくてしょうがねえんですわ。

腐った政治にかかわっているやつらを暗殺して、俺らも最後は切腹だぁ!と意気込みます。

ちなみに昭和のはじめの設定。

 

で、なんでこんな思想になったのか…ってことで

『神風連史話』という勲くんの愛読書が出てきます。

明治のはじめに、革命を起こそうと戦った男たちの話で、さいごは切腹して死ぬんですけど。

誰それがどこで計画を企て、

誰それがどこで誰を襲って、

誰それがどこで追われて、

誰それがどこで腹を切った…みたいな話が延々と続きます。

ただの劇中劇かと思ったら、これも実際にあった事件なんですね。

知らなかった。

とまあ、この長い『神風連史話』の部分のほか

勲くんが親にも内緒で、加担してくれる仲間を集めてこそこそ計画を練るシーンが大半です。

誓いを立てたり、脱落者が出たり、まぁそのへんも面白いといえば面白いんですけど。

(ちなみに年末のこの時期だと、どうしても似たシチュエーションの赤穂浪士が頭をよぎる)

 

と見せかけて、恋愛要素も

 

ところがどっこい、おおたの好物、恋愛描写もちゃんとありました。

しかもタイトルの「奔馬」という表現が出るのも

ちゃっかり恋愛モードに入ったシーンの一度だけ。

 

この巻では、槙子という女性がヒロインポジションです。

(そういえばこの人も自分よりおねえさんだな、さては年上好きか)

 

死を前提とした計画の実行三日前、最後のお別れに槙子に会いに行くシーン。

夜道をおさんぽしながら、話をして、さいごに初めて槙子を抱きしめます。

 

そのときから酔いがはじまった。酔いは或る一点から、突然、奔馬のように軛を切った。女を抱く腕に、狂おしい力が加わった。

 

いぇーい!

政治のこととか、腹切って死にたいとかいろいろ言っておきながら

タイトルの一番大事なワードは、女とのシーンに使われてるじゃないですかー!!

(歪んだ見解でしょうか。結局は恋愛ものが好きです)

 

ちなみに上記シーンのあと、キッスします。

 

しかしながら、恐ろしいのはここから。

 

結局、勲たちは切腹プラン通りには進まず、逮捕されてしまいます。

その裁判の様子がおそろしい。

 

何がおそろしいって、証人として法廷に現れた槙子の証言です。

 

こわい。もうこわい。

年上の女はこわいのよ。

どんなに途中「切腹とか興味ないわあ…」と多少退屈に感じながらでも

ここまでちゃんと読んでよかったと思いました。

 

裁判も終わって家に帰ってから、同じく計画に加担していた刑務所帰りのおじさんに

こんなことも言われます。

 

「男が決して浮気のできない場所、女にとって一番安心できる場所はどこだと思う。牢屋だよ。あんたはあの人に惚れられたばかりに、牢屋へぶち込まれた。思えば男冥利に尽きる話さね。え?」

 

こえーよ!!!

警察に捕まれば切腹できないから、愛する男の命を守ることができる…とか

そんな生易しいもんじゃなかったです。

でも、納得。

たしかにねえと思っちゃう。

ちなみに付け加えておきますが、勲くんは別に浮気性とかじゃないです。

とにかく腹切りしたい危険思想熱血青年ですし。

もっといえば、一度チューしただけで

別に槙子と付き合ってない。

 

やっぱり死ぬ

 

さて暗殺&切腹計画はとん挫…と思いきや、勲くんはやっぱり死にます。

死ぬ前に「そうだ、女に生まれ変わったらいいかもしれません」とか

「ずっと南だ。ずっと暑い。…南の国の薔薇の光りの中で」とか言い出すので

三巻目はきっとそんなお話なんでしょう。

そのつぶやきをまた本多が聞いているのだけど

次巻も本多が登場するのかな。

本多さん好きなので、また会えたら嬉しいかぎり。

 

 

ではね |ω°)ノ